校内に植えられている樹木を紹介するとともに、植えられた木々のエピソードも交えてお話しします。
担当は、環境緑化科教諭中村とBS科教諭谷本です。
校内樹木探訪 4月
桜といえば入学式の代名詞ですが、校内にもたくさんの桜が花を咲かせています。
さて、校内で最も美しい桜を見れる場所をご存知ですか。それはバイオサイエンス科棟と環境緑化科棟を繋ぐ3階西側の渡り廊下です。ソメイヨシノの花をこんなまじかに見ることのできる場所は他にありませんが、ここを訪れる生徒は少なく、穴場中の穴場です。
桜ばかり目立っていますが、桜以外にもジンチョウゲ、ユキヤナギ、レンギョウなどの花も咲いています。サンシュユの黄色の花も実習庭園の西側の園路で見ることができます。
これから1年間、校内で咲いている樹木を中心に紹介していきたいと思います。また、それらの樹木に関するエピソードも語っていきたいと思います。
ソメイヨシノ
ユキヤナギ
サンシュユ
校内樹木探訪 5月
オニグルミ
JR武田尾駅と生瀬駅を結ぶ旧福知山線の廃線跡を歩く「廃線ハイキング」がブームとなって久しいです。
土曜日、日曜日、祝日には多くのハイカーが訪れ、トンネル内では多くの懐中電灯が光っています。
一か所だけとても長いトンネルがあり、ここだけは外部の光が届かないために、暗黒の世界を楽しむことができます。
ハイキングコースとして注目を浴びますが、当然のことながらこのコースには様々な植物が生えています。
その一つがオニグルミです。
本校にも一か所だけこの木が江原川沿いに生えています。9月になるとたくさんの実がなりますが、この実は食べることができます。人間だけではなく、カラスも大好物なのですが、実を咥えて舞いあがりコンクリートの地面に落として割って食べるという頭の良さを見せてくれるのです。
環境緑化科ではこの実を採取し、種子を取り出して4号ポリポットに播種し、ポット樹木を作っています。
温室内で播種するとよく発芽するのですが、温室外の育苗場では発芽しなかったのです。
何故か?よくよく観察すると、ここにもカラスが登場です。どうやってポットの中のオニグルミの実の存在がわかるのか、カラスがくわえて持って行ってしまってたのです。
頭の良さを感心している場合ではないのですが…。
タブノキ
環境緑化科の一年生は夏季校外実習で大阪市立大学付属植物園に行きます。7月下旬に行くのでそこではタブノキの木の下にたくさんの黒い実が落ちています。本校のタブノキも実を落としますがこの植物園ほどではありません。
このタブノキはクスノキとともにアオスジアゲハの食餌植物です。本校では両種とも多くみられ、アオスジアゲハもたくさん生息しています。
横浜国立大学の宮脇昭名誉教授はふるさとの森づくりを推奨されていますが、タブノキをよく利用されています。
ヒラドツツジ
FFJ全国大会農業鑑定協議会造園の部の出題範囲にヒラドツツジは絶対に入っていると思うほど、関西地方では多用される樹木の一つです。ところが生徒たちの持っているポケット樹木図鑑にもその名はなく、出題範囲に入っているのはヒラドツツジの品種であるオオムラサキツツジなのです。
本校では、正門から入って左側にヒラドツツジの大株が植えられており、毎年5月にきれいな花を咲かせます。しかし以前は、両側で咲き誇っていて、昔日の感ありというところでしょうか。
現在右手グランド側はフラワーファクトリ科の花壇が季節ごとの花を美しく咲かせています。
校内樹木探訪 6月
モクゲンジ
中国原産の落葉高木ですが、日本では本州から九州の日本海側の海岸に分布します。これが自然分布か栽培品が逸脱したものかは意見の分かれるところです。
6月中旬から7月初旬にかけて枝先に穂状の花序をつけ、たくさんの黄色い花を咲かせます。
校内では環境緑化科の造園技能検定練習場に列植されており、遠目からも大変きれいに見えます。
そして近づいてみると、この花に訪れるミツバチの多さにも驚かされるでしょう。
ミツバチの密源植物として有望な植物であると思うのですが、花期が短く7月中旬には花が終わってしまうのが難点です。
スイカズラ
冬でも葉を落とさずに頑張っているので「忍冬(ニンドウ)」とも呼ばれます。
本州の山野によく見られる蔓性の木(カズラ)です。
5月から6月にかけて、2つずつが対になった白い花を付けます。
この花の香りのよさにはいつも驚かされます。
アサマイチモンジとイチモンジチョウの食餌植物ですが、本校の実習庭園に生息しているイチモンジチョウはスイカズラではなく、タニウツギが好物のようです。
スイカズラが本校で一番よく繁茂しているところは、バイオ科加工場の裏のグリーンベルトです。
あまり人がはいって行く所ではないのですが、ここは本校農場が171号線によって分断された時に、グリーンベルトとして道路沿いに作られた場所で、アラカシが植栽されました。
その時の盛り土に能勢の山から採取された真砂土が使用され、この中に含まれていた植物の種子(埋土種子)が発芽しています。
その一つがスイカズラです。
撮影しにくい場所のため、左は4月箕面で、右は5月浜島で、中央は同じく5月城山高校で撮影したものです。
ナツメ
クロウメモドキ科の落葉高木です。
和名は夏に入って芽が出ること(夏芽)に由来します。
果実は乾燥させたり(干しなつめ)、菓子材料として食用にされ、また生薬としても用いられます。
原産地は中国から西アジアにかけてであり、日本への渡来は奈良時代以前とされています。
校内樹木探訪 7月
ハナゾノツクバネウツギ
スイカズラ科の常緑低木。ハナツクバネウツギまたはアベリアとも呼ばれている。公園に多く植栽されており、園芸高校の正門周辺部にもたくさん植えられています。
近畿大学農学部の調査ではこの花に多くの蝶が飛来することが確認されています。
バタフライガーデンにぜひ取り入れたい植物のひとつであり、花季が6月から10月と長いことも特徴です。
ガクアジサイ
ユキノシタ科の落葉低木。梅雨の頃に咲く花は周囲に飾り花(装飾花)が付くので、これを額に見立ててこの名がある。房総半島、伊豆半島、伊豆諸島などの沿岸部に生えている。
トウコマツナギ
中国原産のマメ科の落葉小低木。小低木と記載されているが、実際には4mになるものもある。
六甲山頂から裏六甲へ下る登山道の一つに紅葉谷道がある。このコースはブナやイヌブナを見ることができる。このコースを下り終えたところに川が流れているが、ここでコマツナギに似た実をつけた植物を確認した。明らかに在来種のコマツナギと違うと思い、この実を持ち帰り学校で播種し、苗を育てたところ、トウコマツナギであった。
なお、斜面に生えていたトウコマツナギはの法面緑化用として種子を吹き付けたものと思われる。
モンキチョウ、キチョウ、ルリシジミ、ツバメシジミの食餌植物である。
校内樹木探訪 8月
アメリカノウゼンカズラ
中国原産の落葉性ツル植物。6月中旬から8月末まで赤朱色の花を次々と咲かせる。本校内江原川の川沿いに植えられていますが、根からたくさんの芽が発生し、拡がっています。これを防ぐために根切りスコップで芽を切っていますが、芽の出る量が多すぎ、防ぎきれないのが実情です。
なお、この花にはクロアゲハ、モンキアゲハ、ナガサキアゲハが吸蜜に訪れます。その内のナガサキアゲハとモンキアゲハは地球温暖化の影響で北上している昆虫の一つで、1960年代には四国・九州に分布していましたが、今では近畿地方に定着するようになりました。さらに北上は続いており、関東地方まで拡がっています。
サルスベリ
中国原産の落葉小高木。日本には江戸時代に渡来しました。7月初めから9月終わりまで開花します。紅紫色や白色の花をつけます。
正門を入ってすぐ左に行くと花壇があり、その中にサルスベリ(百日紅)が植えられています。実はこの花壇は大阪府立城山高校の廃校に伴って、同校に建てられていた石碑や日時計を本校に移設することになりその記念のために造られた花壇なのですが、そのことを知っている方は少ないようです。これを読まれた方はぜひこの花壇を訪れてください。現在、クララという植物の実がなっています。
セイヨウニンジンボク
クマツヅラ科の耐寒性落葉低木。夏に薄青紫色の小花をたくさんつけます。環境緑化科の苗圃の中央通路に沿って列植されています。嘗状の葉形が朝鮮人参の葉に似ており、原産地がヨーロッパであるため、この名が付きました。
この花にも多くの蝶が訪れるため、バタフライガーデンに導入したい植物の一つです。
校内樹木探訪 9月
スイフヨウ
アオイ科の落葉低木。咲き始めの花弁は白いが、時間が経つにつれピンク色に変色する八重咲きフヨウの変種。酔芙蓉の意味は酔って赤くなることを例えたものである。
サンクガーデン(沈床花壇)のプール寄りに植えられています。
シリブカガシ
樹高10~15mになる常緑高木。どんぐりのお尻の部分が凹んでいるのが特徴で、容易に他のどんぐりと区別することができます。このどんぐりは1個ずつ落下するのではなく、果房ごと落下します。マテバシイも同様の落ち方をします。
実習庭園に植栽されており、これを食べるムラサキシジミが生息しています。また、トラフシジミ、ヤクシマルリシジミの食餌植物でもあります。
遠景 樹の全体像
花序
花と実
雌花
雄花
ミヤギノハギ
樹高1~2mになる落葉低木。7月から9月にかけて開花します。ヤマハギやマルバハギと違い樹高が低いので、庭によく植栽されます。
秋の七草の一つですが、キキョウ、オミナエシ、フジバカマは絶滅が懸念される植物なのですが、オバナ(ススキ)、カワラナデシコ、クズ、ハギは普通に自生しています。
キチョウ、トラフシジミ、ウラキンシジミ、ウラナミシジミ、ルリウラナミシジミ、ルリシジミ、ツバメシジミの食餌植物である。
校内樹木探訪 10月
サキシマフヨウ
サキシマフヨウのサキシマとは「先島」のことで、宮古、八重山諸島の総称である。先月に紹介したスイフヨウが9月頃が見頃なのに対し、本種の開花は少し遅れ10月が見ごろとなります。
本校では江原川の川沿いに植えられています。淡紅色の花が咲きます。
キンモクセイ
小さいオレンジ色の花を無数に咲かせます。芳香がかなり強く、この香りを嗅ぐと秋が来たことを実感させられます。雌雄異株の代表であり、全国農業鑑定競技会造園の部でこのことが出題されたこともあります。日本には雄株しか入っていないため、実がなりません。
現在、この花を集めてアロマセラピーに利用する取り組みを行っています。
イチョウ
中国原産の落葉高木。
種子植物のイチョウにも精子があることを世界で初めて発見したのは平瀬作五郎氏ですが、この功績が認められないまま東京植物学研究室を追われ、中学校の先生になったという話が残っています。
イチョウの実であるギンナンがなるのは10月頃ですが、この頃から環境緑化科の1年生がギンナン剥きを行います。ギンナンの悪臭によもめげず、果肉を取り除き、種子を取り出し、水洗いをする姿をよく見かけます。このギンナンは本校創立記念祭で販売していますが、毎年昼過ぎには完売しています。
本校の校歌に「イチョウの木陰道広く・・・」という歌詞がありますが、改築前は正門から続く通路の両端にイチョウが列植されていましたが、今では片側だけとなりとても残念です。
雄花(4月)
雌花(4月)
校内樹木探訪 11月
カリン
バラ科の落葉高木。中国東部原産。花期は3月から5月、白やピンクの花を咲かせます。
果実は10月から11月に収穫されます。実習庭園の池のほとりに植えられています。今年は成り年でたくさん収穫できました。記念祭で販売しましたが、雨天のため庭園に入園される人が少なく、ほとんど売れ残ってしまいました。園路が土のため、足元が悪く入園を嫌がられたようです。
果実には水溶性タンニンが含まれており、渋くてとても食べられません。さらに果実が硬く生殖することはできないため、砂糖漬けかリキュールに漬けて利用されます。
花(4月)
イヌビワ
クワ科の落葉広葉樹。二次林や林縁に生息する。雌雄異株であり、イヌビワコバチが受粉を手伝っている。果実を裂いてみると、この昆虫が見つかることがある。秋には黒紫色に熟し、食べることができます。
九州・四国に分布しているイシカゲチョウの食餌植物なのですが、地球温暖化とともに北上を続け、妙見山初谷渓谷で生息を確認しています。
スダジイ
ブナ科の常緑高木。タブノキとともに常緑広葉樹を代表する樹種です。堅果(ドングリ)はそのままでも食べることができます。実習庭園の東側には入口が2か所あり、その1か所の階段を降りたところにこのドングリがたくさん落ちています。
ムラサキシジミ、トラフシジミの食餌植物であり、庭園でムラサキシジミを見ることができます。
校内樹木探訪 12月
イチゴノキ
ツツジ科の常緑低木。南ヨーロッパ、アイルランド原産。花は11月~12月に咲きます。果実も同時期に熟し、果実の色は緑色からオレンジ色、赤色へと変化します。
イチゴのような実がなると思われがちですが、そうではなくヤマモモのような実がなります。10月から11月に収穫されジャムや果実酒に利用されます。実習庭園の池のほとりに植えられており、今年は成り年でたくさん収穫できました。
クロガネモチ
モチノキ科の常緑高木。火災を防ぐために家の周りに植えられます。花は5月~6月に咲き、実は11月~4月に成ります。
6月の花
ヒイラギ
モクセイ科の常緑小高木。節分に玄関に飾り、鬼払いをするという風習があります。
本校にあった生物部の機関紙(年発行)の名前が「ヒイラギ」といいましたが、今ではそのクラブは廃部となっています。当時の記念祭ではヒイラギやヒイラギモクセイの葉脈標本を作り、三角紙という昆虫採集用の紙に入れて販売されていました。生物部の主な活動は昆虫採集や植物採集で、休日や春、夏、冬の長期休暇中はそれらの採集に飛び回っていたそうです。
現在、生物部、理科研究部が残っている高等学校は少なくなりました。同様の山歩きを行う山岳部、登山部、ワンダーフォーゲル部なども激減しています。自然の中に身を置く、そんなクラブが廃部になっていくのは残念でなりません。
校内樹木探訪 1月
サザンカ
四国の太平洋岸、九州、南西諸島に生えている常緑小高木です。10月から2月に花を咲かせます。野生種は白色ですが、園芸種にはピンクの花をつけるものもあります。
ツバキは花弁の基部が合着しており、花全体が落下するのに比べ、サザンカは1枚ずつに分かれて散ります。
シナヒイラギ
中国原産のモチノキ科の常緑小高木です。4月から5月に開花し、冬に赤い実がなります。昨年の12月にこの実を使ってクリスマスリースの講習会を行いました。この実を取るために剪定バサミで枝を取りましたが、葉には強烈な棘があり、棘に刺されながら枝を切ったことを覚えています。
ビワ
中国南西部原産のバラ科の常緑高木です。花期は11月から2月で白い花を付けます。自家和合性があり、1本植えるだけで結実します。実は初夏にでき、種子を播けばよく発芽するのですが、結実するまでには7~8年を要します。
農家の庭先や畑の隅によく植えられていますが、その中にはビワを食べた後に種子を播いたものが大きく育ったというものもあるそうです。ビオトープ部が調査している大阪大学の待兼山にも1本だけビワの木があるのですが、どうやらこの木も播かれた種子から大きくなったもののようです。
校内樹木探訪 2月
カンツバキ
ツバキ科の常緑広葉樹です。実習庭園にも様々な樹木が植栽されていおますので、花を見る機会が多いのですが、さすがに厳冬期に咲いている花は稀です。その中でカンツバキの赤い花は特に目立ちます。
ロウバイ
ロウバイ科の落葉広葉樹。1~2月に黄色の花をつけます。唐の国から来たことから「唐梅」とも呼ばれています。秋に実がなりますが、そういえば今まで一度も種を播いたことがありません。今年こそは種播きに挑戦したいと考えています。
ウメ
バラ科の落葉広葉樹。開花期は2月~3月。葉に先立って開花します。花色は白とピンクがあります。花を観賞する花梅品種と実を収穫する実梅品種があります。
昨年、伊丹空港から依頼があって門松を2基制作しました。その時に校門前に植えられているウメを切り、無加温の温室で促成しました。この枝を切って門松を作りましたが、残念ながら門松の撤去までには開花しませんでした。
使用しなかった梅の枝を温室に入れ、いつ開花するかを調べたところ、開花には1ヶ月半を要しました。このことから門松を作る1ヶ月前には梅の枝を温室に入れる必要があることが確認できました。今年の12月に再度門松作りにチャレンジしたいと思っていますが、その時にはバッチリと開花させたいです。
校内樹木探訪 3月
ツバキ
日本原産のツバキ科の常緑広葉樹。ヤブツバキと近縁のユキツバキから様々な園芸品種が作られた。ツバキの花は花弁が個々に散るのはなく、花弁が基部でつながっていてがくを残して丸ごと落下する。それが首が落ちる様子を連想させるため、お見舞いにこの花を持っていくことはタブーとされている。
ヒイラギナンテン
中国原産のメギ科の常緑低木。乾燥に強いためグリーンベルトにも植栽される。花弁に見えるのはがく片であり、中央部に集まって筒状になっているのが花弁である。本校では実習庭園の東側入口に植栽されている。
ミツマタ
ジンチョウゲ科の落葉低木。中国南部原産で室町時代に渡来した。和紙や紙幣の材料として利用される。ミツマタの名の由来は枝が三つ又に分かれるためである。
葉に先立って頭状花序をつける。三月に野山を歩いていると、この花をよく目にする。耐寒登山という行事があった時に妙見山の初谷渓谷コースを歩いたことがあるが、残念ながら一月末に実施されるためにこの花を見ることはできなかった。